メール到達率低下時のKPI分析手順
この記事でわかること
メール到達率が下がったときに、どのKPIを見て、どの順で調査すればよいかを具体的に示します。認証(SPF/DKIM/DMARC)、送信評判、受信側のフィードバックループ(FBL)を用いた原因特定の流れを初心者向けに解説します。
結論(まず何をすべきか)
短く結論を述べます。
- 到達率・配達成功率など主要KPIを確認する。
- 認証ログ(SPF/DKIM/DMARC)を確認し、失敗箇所を特定する。
- 送信IP/ドメインの評判と受信側ブロック情報を確認する。
- フィードバックループ(FBL)や配信エラー(bounce)を解析する。
主要KPIと見るべき指標
重要なKPI(定義と目安)
- 配達率(Delivered): 送信先に到達した割合。目安: 95%以上が理想。
- 開封率(Open Rate): 受信者がメールを開封した割合。業種差あり。
- バウンス率(Bounce Rate): 永久/一時的エラーの割合。永久バウンスは1%未満が望ましい。
- 苦情率(Complaint/Spam Rate): 受信者が迷惑メール報告した割合。0.1%未満を目標。
KPIの優先順
まず配達率とバウンス、次に苦情率、最後に開封率で受信側のブロックや評判問題を特定します。
仕組み(初心者向け解説)
認証とは何か(例えで理解)
認証は"差出人の身分証"のようなものです。受信サーバはその身分証を見て信頼するか判断します。主な要素は次の3つです。
- SPF: どのIPがそのドメインから送信してよいかをDNSで定義。メールの送信元IPが一致しなければSPF失敗。
- DKIM: メール内容に署名を付ける仕組み。改ざん検知と送信者の確認に使う。
- DMARC: SPF/DKIMの結果に基づき、受信側に処理方針(none/quarantine/reject)を伝えるポリシー。レポート(rua/ruf)で集計可能。
評判(Reputation)とFBLの役割
送信IPやドメインの評判は、過去の配信履歴や苦情率で決まります。FBL(受信事業者が提供する苦情通知)は、どのメールが不満を招いたかを教えてくれる重要な手掛かりです。
実践手順:調査フロー(初心者向け)
全体の手順(優先度順)
- KPIを取得する(送信プラットフォームのダッシュボードやログ)。
- スコープを決める:全体か一部配信か、特定のリストか。
- 認証ログを確認:SPF/DKIM/DMARCのPass/Failを確認。
- バウンスと拒否メッセージを解析:SMTP応答コードとエラーメッセージを参照。
- 送信IP/ドメインの評判チェック(ブラックリスト/FBLレポート含む)。
- 受信側ポリシー(ISPの配信基準)や配信量の急増がないか確認。
- 対策を実施し、短期的に再送やセグメント配信で効果を測定。
具体的な確認ポイントと手順
1) KPI取得
使用ツール: メール送信サービス(例: Google Workspace、Microsoft 365、SendGrid等)のレポート。確認内容: 送信数、配達数、バウンス、苦情。
2) 認証ログ確認
方法:
- 受信側のヘッダを確認(Received-SPF、Authentication-Results、DKIM-Signature)。
- SPFがFailなら、送信元IPがSPFレコードに含まれているかDNSで確認。
- DKIMがFailなら、署名対象ヘッダの改変や署名鍵の期限・selectorの誤設定を確認。
- DMARCレポート(rua)を受け取っているなら、集計データで失敗パターンを特定。
3) バウンス解析
SMTPコードの例と意味:
- 5xx(恒久エラー): 受信拒否(アドレス不明、ポリシー拒否)。
- 4xx(一時エラー): 一時的問題(受信側の容量不足や一時ブロック)。
4) 評判チェックとリスト確認
手順:
- 送信IPを主要なブラックリスト(Spamhaus等)で確認。
- Gmail Postmaster、Microsoft SNDS、各ISPの送信者ダッシュボードで配信指標を確認。
- FBL登録しているか確認し、苦情の原本(メールヘッダ含む)を解析。
5) 施策とモニタリング
例:
- 認証不備があれば即修正(SPFレコードの更新、DKIMキー再発行、DMARCポリシーを一時的に"none"にして観察)。
- 配信量を段階的に戻す(warm-up)。
- 高苦情リストは除外し、再エンゲージメント施策で受信者を再確認。
よくあるトラブルと対処法
認証のよくある誤り
- SPFの「文字数/レコード数制限」超過: includeを整理し、spf flattenやサブドメイン分割を検討。
- DKIMで署名が外れる: 中継サービスやメール本文改変が原因。署名ヘッダの範囲を見直す。
- DMARCポリシーで受信拒否が発生: ポリシーが厳しすぎる場合は一時的にpolicy=noneにして監視。
評価低下・苦情増加時の対処
- 直ちにFBLや苦情メールを解析し、問題のコンテンツや送信セグメントを特定。
- 問題セグメントの送信停止と、過去30日以内に苦情が多いアドレスの除外。
- 再発防止のための認証強化と送信量コントロール。
他の技術との関係
SPF/DKIM/DMARCは単独ではなく、リスト品質、コンテンツ、送信頻度、IPウォームアップと合わせて運用する必要があります。DNS TTL、メール中継(relay)やサードパーティ送信サービスの設定も密接に関係します。
まとめ
結論: 到達率低下では、まずKPIを把握し、認証ログ→バウンス解析→評判/FBLの順で調査するのが効率的です。短期対処(認証修正・送信制御)と長期改善(リスト管理・コンテンツ改善)を並行して行ってください。
簡単なチェックリスト:
- KPI確認(配達率・バウンス・苦情)
- 認証(SPF/DKIM/DMARC)ログの確認
- バウンス/SMTPコード解析
- 送信IP/ドメインの評判とFBL確認
- 対策実施と効果測定